「どこかで見たことがある、と思ってもらえたら」中井友望が語る、自分らしい芝居と俳優としての現在地|インタビュー

俳優としてさまざまな作品に出演し、それぞれの役柄に独自の存在感を与えてきた中井友望。11月には、映画『すべて真夜中の恋人たち』の公開を控えるほか、『ショードラpresents セイカイガワカラナイ』にも出演している。

11月13日公開の映画『すべて真夜中の恋人たち』は、川上未映子の同名小説を岨手由貴子監督が映画化した作品。人との関わりを避け、静かな日々を送るフリーの校閲者・入江冬子(岸井ゆきの)が、年上の物理教師・三束(浅野忠信)との出会いをきっかけに、少しずつ日常を変え、自らの孤独や感情と向き合っていく物語だ。中井は、岸井が演じる冬子の学生時代を演じる。

一方、『ショードラpresents セイカイガワカラナイ』では、妹を思う姉・七海を演じた。亡くなった母をAIとして再現して暮らす妹・未咲(河田陽菜)との関係を通して、家族のあり方や、何が正しいのかという問いを描く物語。一見すると正しいことを言っているようで、自分自身も矛盾を抱える七海という人物を、中井はどのように表現したのか。

今回のインタビューでは、出演する2作品についてはもちろん、俳優として歩んできた道のりや、役と自分自身との接点を探りながら芝居を作り上げる独自のアプローチ、そしてこれから挑戦したい役柄について話を聞いた。「楽しむことが一番難しい」と語る中井友望が、今、俳優という仕事とどのように向き合っているのか。その言葉から、彼女の素顔と表現への思いに迫る。

「岸井ゆきのさんの冬子から感じたもの」――中井友望が向き合った、学生時代の冬子

――11月公開の映画『すべて真夜中の恋人たち』への出演が決まったとき、まずどんな印象を持ちましたか?

中井友望(以下、中井):以前より原作小説を読んでいて、初めて読んだのは19歳くらいのときでした。今回、この作品に関わることになって改めて読み返したのですが、当時とは感じる印象がかなり違っていて。年齢を重ねてきた中で、自分の中で、より深い部分で恥ずかしさの感情など共感できることが増えていました。有名な小説を映画化するのは、いろんな段階があって、すごく難しいことだと思います。ですが、脚本を読み「こんなにうまく台本に落とし込めるんだ」と驚きました。出演が決まったときはもちろん嬉しかったですし、脚本を読んで、より一層この物語に関われることについて喜びを感じました。

――学生時代の冬子を演じるにあたって、最初に考えたことや、人物像を作る上で意識したことはありますか?

中井:原作を読んだときの印象に加えて、岸井ゆきのさんが演じる冬子について、既に撮影していた本編の一部を確認できたことが大きかったです。私が演じるのは学生時代の冬子で、岸井さんが演じる冬子の回想として登場するのですが、岸井さんの芝居がとても面白くて。特に目線の使い方や表情の動きが印象的でした。言葉数が少なく、自分の意見をうまく言えない一方で、人と話す中で感じた違和感は顔に出てしまう。そんな姿から、頑固な一面も垣間見えて、「確かに冬子にはこういう部分があるんだろうな」と勉強になりました。だからこそ、面倒くささや頑固さを前面に出さず、内側に秘めた人物として演じたいなと思いました。

――演出面で、監督から受けた言葉で印象に残っていることはありますか?

中井:岨手監督はすごく優しい方で、シーンに入る前に、まずお芝居についてディスカッションをしてくださりました。「このシーンはこういう感じだと思うけど、どう思う?」と聞いてくださって。これまでは、監督から演出をいただいて、それに応えるという意識が強かったのですが、今作ではすごくフラットな距離感で接してくださったので、自身の意見も伝えやすかったですし、決して否定せずに「確かにそういう部分もあるかもね」と受け止めてくださいました。そのため、「一緒に作品を作っている」という実感が強くありました。俳優への寄り添い方からも、岨手監督は監督である以前に、映画が本当に好きな方なのだなと感じました。とても安心感のある現場だったなと思います。

「自分の言葉に、自分でもダメージを受けながら」――中井友望が向き合った、七海の葛藤

――続いて、『ショードラpresents セイカイガワカラナイ』について伺います。中井さんが演じた七海について台本を読んだとき、どんな人物だと捉えましたか?

中井:姉として妹を軌道修正しようとする一方で、自分自身も様々な矛盾した感情を抱えている人物だと捉えました。最後に「実は七海もそうだったんだ」とわかる部分を、どこまで劇的に見せるか。大げさになりすぎず、リアリティを保ちながらどう表現していくかは、すごく考えました。

――一見すると「正しいこと」を言っているけれど、その正しさだけでは割り切れないものを抱えている。その矛盾はどのように考えて演じていましたか?

中井:妹に向けて言った言葉が、そのまま自分にも返ってきているんだろうなと思いました。妹に言いながら、自分自身にも深く刺さっているようなセリフが多かったので、自分の言葉に自分でもダメージを受けるような感情を大切にしていました。

――妹・未咲との姉妹関係を作る上で、撮影前に考えていたことや、現場で変化していったことはありますか?

中井:撮影は2日間で、かなりタイトなスケジュールでした。その中で、家族、しかも姉妹の関係性をどう表現できるだろう、と考えていました。私自身、女姉妹がいなくて、妹役の河田さんもいないとおっしゃっていたので、なかなか具体的に想像できませんでした。だからこそ、まずは仲良くなることが大切だと思い、私から話しかけたりしていました。お芝居以外のところでも、積極的にコミュニケーションを取るようにして、関係性も変化していったのでは、と思います。

――作品では、大切な人をAIでよみがえらせるという設定も描かれます。台本を読んだとき、そして作品を通して、AIについて考えたことはありましたか?

中井:最近、AIの話題って増えてきましたよね。亡くなった人を取り戻したいという気持ちについては、きっと誰にでもあることだと思います。ただ、正直なところ、私はその気持ちがあまりわからないんです。そして、AIで動画などを作ることができる時代になったことに、怖さを感じたりもします。AIについては色々な感情が湧き上がってくるので、私はまだAIというものを、あまり受け入れられていないのかもしれません。

「自分の要素と役の要素を組み合わせて」――中井友望が大切にする、芝居との向き合い方

――ここからは中井さん自身について伺いたいと思います。中学生の頃に映画をたくさん観るようになったことが、女優を目指すきっかけの一つだったと以前お話しされていました。改めて、映画やお芝居に惹かれた原点を教えてください。

中井:小さい頃から、自分の感情を言葉にすることも、何かを表現することも、すごく苦手な子どもでした。だからこそ、映画やドラマの中で、生き生きと自分を表現している人たちを見て、羨ましいなと思っていました。それが、お芝居に惹かれた最初のきっかけです。

――一度は女優をやめようと思った時期もあったそうですね。

中井:何をやっていても、「やめようかな」と思うことってあるじゃないですか。そこで本当にやめてしまうこともあれば、一度はそう思っても、なんとなく続けていることもある。私はわりといろいろなことをやめがちで、習い事もあまり続きませんでした。ですが、この俳優という仕事だけは、一度「やめようかな」と思ったことがありましたが、なぜか続いている。それが、すごく自信になっています。

――これまでいろいろな役を演じてきた中で、「この役を経験したことで芝居観が変わった」と感じる役はありますか?

中井:たくさんあります。一つは、初めて主演映画に出演したときです。役柄というより、自分が主演として映画に携われたこと自体が大きかったです。主演を務めることは夢でしたし、現場にいる時間も長くなります。その中で、日々いろんなことを感じたり、考えたりしながらお芝居をして、スタッフさんとの距離も近くなって。「現場って楽しいんだ」と思えたことが、今でも芝居を続けている大きなきっかけになりました。役柄でいいますと、暗い役や、自分の中に何かを抱えていて、誰かに救ってもらうような役が多かったのですが、ドラマ『コールミー・バイ・ノーネーム』では、これまで演じたことのない役に挑戦しました。心に余裕があって、人に助言をしたり、寄り添ったり、手を差し伸べたりできる女の子の役だったのですが、それがすごく楽しくて。「自分には、こういう一面を持つ役も演じられるんだ」と知ることができて、その作品をきっかけに、自分でも役の幅を広げられたと思います。

――中井さんは、役を演じる前にどんなことを考えて、自分の中に役を落とし込んでいくのでしょうか?

中井:役を作り込んで、自分自身がガラッと変わるというよりは、自分に近い要素を少しずつ手繰り寄せて、役と自分との間に接点を見つけながら演じることが多いと思います。

――自分との共通点を手繰り寄せながら、役への理解を深めていくんですね。

中井:そうです。いわゆる「憑依型」のような演じ方は、私にはできないと思っています。自分の要素と役の要素をうまく組み合わせていくことが多いですね。

――中井さんにとって「いいお芝居」とは、どんなお芝居でしょう?

中井:お芝居しているなって思わないお芝居です。その役柄自体が存在しているように感じられるお芝居かなと思います。私の好みでいうと、リアリティがあるお芝居が好きです。

――今、俳優として大切にしていることはありますか?

中井:楽しむことです。楽しむのって、一番難しいなって思っています。

――作品の中ではさまざまな人物を演じていますが、普段の中井さんはどんな性格だと言われることが多いですか?

中井:マイペースで、気分屋だと言われます。仕事のときは、ポーカーフェイスというか、「何を考えているかわかりづらい」と言われることもあります。ですが、友達や家族といるときは感情がすごく顔に出るし、機嫌もわかりやすいと思います。いい意味で、嘘がつけないということなのかなと思っています。

――休日はどのように過ごすことが多いですか? 最近ハマっていることや、興味を持っていることはありますか?

中井:今、興味があるのは山登りです。旅行も好きで、旅行先では割とアウトドアですが、東京にいると、あまり外に出ていないなと思って。高尾山とか、東京にある身近な山のことも意外と知らないので、まずは今年中に高尾山に登りたいなと思っています。

「自分にしか出せない色を大切に」――中井友望が見据える、これから

――これからの中井さんについても伺いたいです。これまで演じてきた役とはまた違う、まだ見せていない表情を見せられるとしたら、どんな役に挑戦してみたいですか?

中井:今まで学生役がすごく多くて。今26歳なのですが、実年齢より下に見られることが多く、今年も学生役をやりました。そのため、お仕事をテーマにしたような、職に就いている役をやりたいです。OLさんのような役というよりは、専門的な職業に就いている役をやってみたいですね。

――今後、一緒に作品を作ってみたい俳優さんや監督さんはいらっしゃいますか?

中井:一番好きな監督は、ずっと沖田修一監督です。去年、念願の沖田監督作品に少し出演することができましたが、ご一緒したことで、沖田組にもっとがっつり参加したいという気持ちがさらに強くなりました。沖田さんの映画は、観るとすごく幸せな気持ちになれます。

――では最後に、これから中井さんのことを知る方、中井さんのお芝居に出会う方へ、メッセージをお願いします。

中井:様々な作品に出演させてもらう中で、ありがたいことに「このキャラクターと、このキャラクターが同じ子だとは思わなかった」と言っていただくことが最近増えてきました。一方で、声や話し方で気づいてもらえることも多くて。だからこそ、私にしか出せない色のようなものは、これからも大事にしていきたいと思っています。もちろん名前も覚えてもらえたら嬉しいですが、「どこかで見たことがあるな」、「どこかで聞いたことがある声だな」など。そのように、少しでも記憶に残る俳優になれたら嬉しいです。

〈取材・文/石原玄基〉

映画『すべて真夜中の恋人たち』

2026年11月13日(金)全国ロードショー

監督・脚本:岨手由貴子
原作:川上未映子「すべて真夜中の恋人たち」(講談社文庫)
出演:岸井ゆきの、浅野忠信、森田望智、深川麻衣、塩野瑛久、中村優子、長井短、祷キララ、中井友望、林裕太ほか
配給:ビターズ・エンド

公式サイト
映画『すべて真夜中の恋人たち』公式サイト

『ショードラpresents セイカイガワカラナイ』

TVer・ABEMAで見逃し配信中
出演:河田陽菜、中井友望、櫻井淳子ほか
制作:ショードラ
制作著作:ABCテレビ

公式サイト
ABCテレビ『セイカイガワカラナイ』公式サイト

PROFILE

中井友望

2000年1月6日、大阪府出身。ミスiD2019グランプリ。主な出演作は、『廃用身』(26)、NHK『風、薫る』(26)、Hulu『八神瑛子 -上野中央署組織犯罪対策課-』(26)、TBS『Tシャツが乾くまで』(26)、ABC『セイカイガワカラナイ』(26)、『さとこはいつも』(26)など。待機作にWOWOW『マイ・スイート・ホーム』(26)、『すべて真夜中の恋人たち』(26)、『シルバー・エクスプレス』(26)、『うるさいこの音の全部』(26)などがある。

中井友望 公式プロフィール(TEN CARAT)

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