2026年8月8日に公開された映画『床一面こんな感じ』で園凜とダブル主演を務め、9月には主演舞台『懺悔と七面鳥』を控える俳優・瀬戸璃子。さまざまな作品で存在感を放ちながら、芝居に対して熱い探究心を燃やす彼女は、日々の暮らしのすべてを表現の糧にしている。
『床一面こんな感じ』では、シェアハウスで暮らす親友同士の“ことり”を演じた。憧れの男性が訪れることになり、散らかった部屋を片付けようとする一夜を描いた本作では、台本に書かれていない動作や、その場で生まれる空気を大切にしながら役と向き合ったという。
一方、9月4日から東京芸術劇場シアターイーストで上演される『懺悔と七面鳥』では主演を務める。福田沙紀が演出、國吉咲貴が脚本を手がける本作は、SNSの裏アカウントを使って鬱憤を晴らしていた女性が、懺悔室で人々の本音を知ることから始まる物語。瀬戸は主人公・湯田ユカを演じる。
映画と舞台、異なる表現の場に挑む今、瀬戸璃子は何を考えているのか。役との向き合い方、俳優を目指した原点、そして「お芝居し続けられることが明るい未来」と語る彼女の現在地に迫った。

「あんまり意識してやっていない」——自然体で迎える、充実の夏
——映画が公開され、主演舞台が控える今、どんな気持ちでこの夏を迎えていらっしゃいますか?
瀬戸璃子(以下、瀬戸):「今月はこうだから、今はこうする」というようなことは、あまり意識してやっていないですね。ただ、日頃からインプットのアンテナは絶やさないようにしています。
普段から本をたくさん読んだり、街を歩くときもスマホを見すぎないようにして、なるべく周りのものを見るようにしています。あとは、自分とは違う考え方を持っている人とも積極的に話すようにしていますね。
「この人は、どうしてこういうことを言ったんだろう」と、その人の考えや背景を想像しながら過ごすことで、自分の中にないものを少しずつ吸収していく。そういうことは、日々大切にしています。

映画『床一面こんな感じ』で見せた、心地よい2人のリアルな距離感
——映画『床一面こんな感じ』、すごく素敵な作品でした。2人の会話が心地よくて、ずっと見ていたくなる空気感でしたね。
瀬戸: ありがとうございます!
——演じられた「ことり」という役柄について、共感した部分や自分とは違うなと感じた部分はありましたか?
瀬戸: 平和主義なところが一緒ですね。何か問題が起こったとき、「ことり」はなるべく事勿れにしようとする。私は「事勿れの方向には行きたいけれど、思ったことはその場で言う」というタイプなので、目的地は一緒だけどルートが違うなと。あとは、楽しいことが好きなところも一緒です。トイレに30分くらい入っちゃうところとかも(笑)。
——役を演じる上で、一番大切にした部分はどこですか?
瀬戸: 受け身でいること、そして「考えすぎないこと」をすごく大事にしていました。
日常の延長にあるようなお話なので、「ここではこのくらい間を取って」と計算してしまうと、かえって冷めてしまうんじゃないかなと思っていて。その場で「すずか」を演じた園凜と一緒に、その場で生まれる空気感を大切にしていました。
台本に書かれていなくても、「今は喋りたくないな」と思ったら黙る。そういう、その瞬間に生まれた感覚を、2人で大事にしていた気がします。
動作のアドリブも結構多くて、「漫画を読んでください」とは書かれていなくても自然に読んでみたり、逆にふと読むのをやめてみたり。あらかじめ決めていたことを再現するというより、その場で自然に生まれていくものを楽しみながらお芝居をしていました。
——監督からは何か印象的な言葉をかけられましたか?
瀬戸: シーンが終わるごとに「めっちゃ良い」と言ってくださっていたのがうれしかったです。あとは、ベランダでハグをするシーンで「ここは異常に思い入れを作ってほしい」と言われたのをすごく覚えていて。そのあと園凜と「異常な思い入れを作ろう!」と言いあって撮影に臨んだのが印象的です。

棚を買ったものの……? 瀬戸璃子のリアルなプライベートとお部屋事情
——作中では「憧れの人が来るから部屋を掃除する」という設定がありましたが、瀬戸さんご自身はお部屋のこだわりなどありますか?
瀬戸: 私も、部屋がすごく汚いんです……!(笑) これじゃいけないなというのと、こだわりを持とうと思って棚を買いました。強いて部屋のこだわりを言うなら、「嫌いなものは置かない。好きなものしか置かない」ことですね。
——劇中の「ことり」たちのように焦ってしまう瞬間はありますか?
瀬戸: 日々あります! 帰り道に友達と喋っていて「あー、なんか喋りすぎたかも……」と一人反省会をすることも多いです。あと電車に乗り遅れそうになることが多々あって、いつも走っています。のんびり歩いていそうに見えて、すごく走ってますね(笑)。

『懺悔と七面鳥』主演。「なぜ?」が最初に浮かんだ
――続いて、舞台『懺悔と七面鳥』について伺わせてください。主演が決まったときの率直な気持ちを教えてください。
瀬戸:まず「なぜ?」というのが一番でした。
いまだに聞けてないんですけども、どういう経緯でお話をいただいたのかが分からなかったので「なぜ選んでもらえたんだろう」という気持ちが大きかったです。
――演じる役柄については、どんな人物だと捉えていますか?
瀬戸:「究極の八方美人」というふうに捉えています。
その八方美人でいるための努力も半端ない分、裏で発散しているなって思っています。
――役に共感した部分や、自分とは違うと感じた部分はありますか?
瀬戸:私自身もちょっと八方美人なところがあるので、そういう部分には共感しています。ただ、結構ひどいことをされても、その相手に対して対面では全然怒らないところは、正直「そんなことってあるのかな」と思う部分もあります。そこは、自分とは少し違うなと感じています。
――主演として稽古場で一番大切にしたいことはありますか?
瀬戸: スタッフさんや共演者の皆さんとは、積極的にお話ししたいと思っています。
主演という肩書きをいただいていますが、まだまだ自分が一番この現場に慣れていないんじゃないかと思っているので、だからこそ、皆さんからたくさんのことを吸収したいです。
その場、その瞬間に何をすることが作品にとって一番いいのか、皆さんとコミュニケーションを取りながら、探求し続けていきたいと思っています。

©関口きらら
クラシックバレエ、家族への憧れ、演劇部——俳優・瀬戸璃子を形作った3つの原点
——俳優を目指した原点を教えてください。
瀬戸:原点は、3つあると思っています。
1つ目は、真剣に取り組んでいたクラシックバレエでの経験です。人前に立って、お芝居を交えながら表現することがすごく楽しくて。そのときに感じた楽しさが、自分の中にずっと根付いていました。
2つ目は、アニーのミュージカルを観に行ったときに、「自分も出たい!」と思ったことです。当時はまだ5歳だったので、芸能に対して厳しかった両親を説得できるはずもなく……(笑)。でも、「自分も舞台に立ちたい」という気持ちは、その頃からずっと心の中にありました。
3つ目は、中高時代の演劇部での活動です。演じることが本当に楽しくて、「これが生涯の仕事になったら、きっと楽しいだろうな」と思うようになりました。
表現することの楽しさ、舞台に立ちたいという憧れ、そして演じることを仕事にしたいという思い。その3つが重なって、今の自分につながる原点になったんじゃないかなと思います。
——芝居に対する考え方が変わったターニングポイントはありましたか?
瀬戸: いつからかは明確には覚えていないのですが、以前はセリフをガチガチに覚えて、「ここでこうして、ああして」と動きまで細かく決めていくタイプでした。
でも、いつの間にか、セリフと大まかな方向性だけを決めて、あえて動きは決めないスタイルに変わっていきました。
現場で相手と向き合ったときに生まれるものや、その瞬間にしか出せないものを、どれだけお芝居に乗せられるか。今はそこをすごく大事にしています。
まだまだ発展途上ではありますが、そうやって毎回新しいものを生み出せるように、日々挑戦しています。
——表現者として大切にしているモットーや信念はありますか?
瀬戸: 表現者としてというより、一人の人間として、「人には人の地獄がある」ということを大事にしています。ちょっと暗い響きに聞こえるかもしれないですが……(笑)。
忙しかったり、嫌なことがあったり、人それぞれ日々いろいろなことがあると思うんです。でも、どんなときも「絶対に自分が一番辛い」とは思わないようにしています。
そう思わないことで、相手の悩みや背景を軽んじることなく、ちゃんと一人の人間として真摯に向き合える自分でいられる気がするんです。
自分には見えていないところで、その人にもその人なりの苦しさや事情がある。そういうことを忘れずにいることは、どんな場面でも大事にしていきたい考え方です。
——このお仕事を選んで本当に良かったと思えるのはどんな時ですか?
瀬戸: 毎日かもしれないです。
何が起こっても全部お芝居の「肥やし」になるので!
この仕事に限ったことではないけれど、生きていたらいろんなことが起こるけど全てに意味があると改めて思えるところです。私、興味の矛先がいろんなところにあって、漫画も読みたい、本も読みたい、映画も見たい、遊びたい、馬に乗りたい、旅行したい……それら全てが役に還元できちゃうのは最高だなと思っていて。毎日「この仕事でよかった」って思っています。
「猪突猛進」「マイペース」――瀬戸璃子の素顔
——プライベートではどんな性格だと言われますか?
瀬戸: 猪突猛進、マイペースって言われますね。自分から「あれやりたい! これやりたい!」と言い出すことが多いです。あと、周囲から意外と「男らしいね」と言われます。
——これから挑戦してみたい役柄やジャンルはありますか?
瀬戸: 強いて言えば、すごくかっこいい役をやりたいですね。例えば、馬に乗っているような女性とか! アクションも月に1回ペースで教室に通って練習しているので、いつか挑戦したいです。
——共演してみたい俳優さんや監督はいますか?
瀬戸: え、いすぎます(笑)。いすぎて困っちゃいますけど……!
監督でいうと、三木聡さんと濱口竜介さんとぜひご一緒したいです。
三木さんは『亀は意外と速く泳ぐ』が大好きで。ポップではないものをポップに描く力や、観ている人を惹き込み続ける小ネタの数々が本当にすごいなと思っています。
濱口さんは、「人生で大事なことは、かいつまんで話したときに省かれるところに詰まっている」というある小説の言葉を、そのまま体現されているような映画を作られていると感じています。すごく独特な作り方をされている方だと思うので、ぜひ一度、その世界に挑戦してみたいです。
実は以前、電車の中で小説版の『急に具合が悪くなる』(※濱口竜介さん監督作)を読んでいて、駅で降りたタイミングで、たまたま濱口監督ご本人を見かけたことがあって! 「うわ、本物だ……!」って、勝手に運命を感じてしまいました(笑)。
たぶんお仕事関係の方とお話しされていたので、そのときは声をかけられなかったんですけど……いつかご一緒できたら、そのときにこのお話をできたら嬉しいですね。
「楽しむ力と体力には自信があります」——これからの俳優・瀬戸璃子が目指す場所
——読者の皆さんに、今一番知ってほしい自分の魅力は何ですか?
瀬戸:まず「何に関しても楽しむ力があること」と「体力があること」を伝えたいです(笑)今回のインタビューや出演作を通して、私自身の人となりを感じてもらって、「こういう役だけじゃなく、こんな役もできるんだ」と思っていただけたら嬉しいですね。
そして、毎日一生懸命楽しんでもらえるように頑張るので、出演作を見かけたら『あ、いるな』って思いながら、温かく見守っていただけたら嬉しいです。
——今回のインタビューのテーマである「始まりのシーン」にちなんで、今の瀬戸さんが向かう未来について教えてください。
瀬戸: 大きな意味での未来を考えると、これからもお芝居をし続けられるような環境、世の中が続いていてほしい、という願いがあります。そんな明るい未来が待っていたらいいなと思います。
自分自身の未来についても、きっと明るい未来が待っていると信じています。私にとって、お芝居をし続けられているということは、日常生活もすごく楽しくて、ちゃんとバランスが取れているということだと思うんです。
だから、私にとっての「明るい未来」は、これからもお芝居をし続けられていることなのかなと思っています。
——未来の自分に向けてメッセージをお願いします。
瀬戸: 「頼むから勘違いするなよ、奢り高ぶるなよ」って未来の自分に言いたいですね(笑)。人間としても一人の女性としても、自分が素敵だと思うような「仕事ができてカラッとした強い女性・先輩」たちのように働けていたらいいなと思います。
——最後に、映画『床一面こんな感じ』と舞台『懺悔と七面鳥』を楽しみにしている読者へメッセージをお願いします!
瀬戸: 『床一面こんな感じ』は、すごく日常に寄り添った、大切なことがたくさん詰まっている作品です。楽しく観ていただける作品だと思うので、ぜひ1日のどこかに予定を入れて、観に来ていただけたら嬉しいです。
そして、これから始まる舞台『懺悔と七面鳥』も、素晴らしい座組の皆さんとご一緒できることが本当に楽しみで、今からドキドキしています。読めば読むほど面白い台本なので、その作品が持つ空気感を大切にしながら、現場でしか生まれない新しい世界観を皆さんと一緒につくっていけるよう頑張ります。
今回の作品を通して、私のことを知っていただけることもすごく嬉しいです。「探さなくても、あ、また出てるな」と思ってもらえるような俳優になれるよう、これからも頑張っていきたいと思います。 皆さんも体調に気をつけて、元気に過ごしましょう!
〈取材・文/石原玄基〉
映画『床一面こんな感じ』HP
舞台『懺悔と七面鳥』HP
PROFILE
瀬戸璃子(せと・りこ)
2001年6月10日生まれ、東京都出身。ボックスコーポレーション所属。俳優・モデルとして活動。趣味は読書、油絵、トランペット。特技はクラシックバレエ(12年間)、コンテンポラリーダンス。映画、ドラマ、舞台、MVなど幅広く出演している。
Instagram
瀬戸璃子 Instagram|@umauma_bot
公式プロフィール
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